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1 被疑者になるということ

 普通に生活をしている限り、警察に逮捕されたり、取調を受けたりということはないと思われているかもしれません。しかし、弁護人として刑事事件を取り扱うとき、普通の生活を送っていた人が刑事事件の被疑者として取り調べられることはまれとは言えません。

 自動車を運転していて人身事故を起こしてしまった場合はもちろん、電車に乗っていて痴漢と間違われるケース、出来心で万引をしてしまったというケースなど刑事事件になるケースは思いのほか身近に存在します。

 被疑者として逮捕・勾留されると、警察署等において身柄を拘束され、精神的に負担を負い、また仕事や業務に支障が生じることになります。

 

2 身柄拘束(逮捕・勾留)された時の弁護士の役割

① 警察の容疑が事実に反しているとき・否認事件

 まず、逮捕は最大で3日、勾留は最大で20日間継続し、その間、警察署・拘置所等で身柄を拘束されます。

 警察に逮捕された時、弁護士以外は面会できません。

 我々は弁護人としての経験から、逮捕段階での初回接見が一番重要であると考えています。

 「自分は犯罪をしていない」という、警察の疑いを争う場合を否認事件といいます。この場合、弁護士がご本人とできるだけ早く面会し、ご本人の主張を聞き、今後、警察・検察でどのような手続・取調が行われるのか、黙秘権の行使など刑事訴訟法上の手続や権利を説明し、ご本人の認識している事実を正確に警察に主張する心構えや準備をしなければなりません。

 特に、事実に反する自白をさせられないようにご本人と面会を続けることは非常に重要です。

 弁護人となった場合には、適宜、ご本人と面会し、その主張を裏付ける証拠を収集し、刑事裁判にするかどうかを判断する検察官に事実関係・弁護人の意見等を伝え、不起訴(刑事裁判としない検察官の判断)に向けた弁護活動を行います。

 また、ご本人の身柄解放を求め、検察官の勾留・勾留延長請求を争い、早期の釈放を求めていきます。なお、刑事訴訟法上、保釈請求は起訴された後にすることができます。

 

② 警察の容疑を認めているとき

 この場合であっても、早期の面会が必要であることは何ら変わりません。

 まず、ご本人が認めている事実が本当に事実であるか、また本当に違法となりうるかを法的観点から検討するためにも、早期に面会してお話をお聞きする必要があります。

 弁護人となる場合には、お話をお聞きした上で弁護人としての見解をご本人に伝え、一緒に今後の方針を検討します。

 示談・被害弁償においては、ご本人の反省・謝罪の意思を被害者に伝え、生じさせた損害に対する適正な賠償をすることになります。示談・被害弁償は必ずしも検察官の不起訴処分につながるものではありませんが、被疑者段階における非常に重要な活動の一つです。

 また、ご本人の更生というのも非常に重要な要素です。家族と打ち合わせをし、家族の陳述書などを作成し、今後同様の行為をしないような環境を準備し、その旨、検察官に伝えて理解を求めるなどします。

​ ご本人の身柄解放に向けた活動は上記①と同じです。

 

3 起訴後の弁護活動

 捜査の結果、検察官により起訴された場合、刑事裁判手続となります。

① 証拠の閲覧・謄写

 この段階でようやく検察官より、裁判所に提出予定の証拠が開示されますので、弁護人はそれらを閲覧・謄写して、それらをもとに今後の弁護方針を検討します。

 

② 保釈請求

 また、早期の身柄解放のために、ご本人やご家族と打ち合わせし、保釈金の準備やその他保釈の要件に必要な事柄について準備し、適宜、保釈請求を行います。

 

③ 刑事裁判(公判前整理手続)

 重大事件を取り扱う裁判員裁判の場合や、争点が複雑な事件の場合には、正式な法廷での裁判期日の前に、弁護側・検察側の双方の主張や取り調べる証拠を整理する公判前整理手続になります。それらの中で、弁護人は検察官に対し、起訴事実が広範にならないように明確にしたり、検察官の有している被告人に有利な証拠を検討するために証拠開示請求をなし、弁護側の主張を構成し、公判において提出する被告人に有利な証拠の取調べを請求するなど準備をしていきます。

 

④ 刑事裁判(公判期日・判決期日)

 弁護人は公判期日においては、被告人の立場に立って、その主張・立証をします。

 否認事件の場合には、検察側の主張や証拠・証人について争い、また事実面・法律面の両面から弁護側の主張を構成し、有利な証拠の提出、証人尋問等を行っていきます。

 争いのない場合には、その起訴事実について適切な法的評価を加え、また被告人の反省や被害弁償の事実、ご本人の更生に向けた家族の準備状況などを裁判官に説明し、執行猶予を求めるなど適切な刑事処分を裁判所に求めていきます。

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